秋田・安東氏の拠点とされる十三湊は何時頃から整備されたのは記録 や資料が極端に少なく不詳ですが概ね鎌倉時代から室町時代にかけて繁栄したとされ、当時は伝承や伝説の類のみで本当にあったのかも疑問視する人も多かったとされます。発掘調査によると１３世紀初期には町並みが形成されたと見られ、これは安藤五郎（堯秀）が代官として赴任したと年と思われる元久元年（１２０４）〜貞応３年（１２２４）や、寛喜元年（１２２９）に当時の領主十三秀直が萩の台の戦で安東氏に敗れ滅ぼされた年代に近い事から安藤氏が十三氏を滅ぼし当地を掌握した後に開発や湊の運営が行われたと思われます。特に安藤氏が「蝦夷の沙汰」の利権を掌握すると、蝦夷地（北海道）から産出される海産物や動物の毛皮など当時の貴重品が十三湊を経由して日本海沿いの主要の湊に運びこまれた事から東北地方では往時の奥州平泉に匹敵する程の繁栄をしたとされます。遺跡としては南北約２キロ、東西最大５００ｍと広大で、安藤家の居館と思われる土塁や堀を有する館跡や家臣団が住んだと思われる武家屋敷跡、町屋、寺院、井戸跡などが発見され一大都市が建設されていた事が窺えます。又、幅４〜５ｍの直線的道路や、短冊形で区分けされた町屋の敷地、板塀で囲われた屋敷群、鍛冶工房、製銅工房、墓地など今で言う都市計画が成され高い意識と技術を持ち合わせた人々が文化的な生活を営んでいたと思われます。さらに、中国製の陶磁器、高麗製の青磁器も見れる事から博多津と同様に国際湊としても重要視され京都産と思われる遺物も発見されている事からも広く貿易し様々な文化的な品々が十三湊にもたらされていたと思われます。実際、秋田・安東氏が現在の福井県小浜市に境内を構える羽賀寺の大檀那となり堂宇の造営など多大な庇護を加えている事からも、少なくとも蝦夷地から小浜湊で海路を掌握し、小浜湊から京都へ陸路（近世の鯖街道）で多くの物資を搬出入していたと思われます。 往時の十三湊は日本海の荒波や強風から回避出来、岩木川で津軽の要衝と結ぶ事が出来た天然の良港で、「前潟」、「セバト沼」、「明神沼」が当時の水戸口として日本海に通じていたと思われます。十三湊は戦後時代に庇護者であった秋田・安東氏は南部家の侵攻により他所に逃れた為に急速に衰退し直接的な資料は失われましたが、室町時代に編纂された「廻船式目」では日本全国の重要な港として選定された「三津七湊」の中で奥州津軽十三湊として記載されている事からも全国でも有数の湊として認知されていた事が分かります。周囲には山王坊遺跡（秋田・安東氏が近江の日吉大社の分霊を勧請したと思われる神社と、別当と思われる寺院の礎石跡が残る中世の神仏習合遺跡）や浜の明神遺跡（十三湊の水戸口に航海の守護神として信仰された宗教施設跡）、福島城跡など中世の秋田・安東氏と関わりがあると推察される遺跡が点在し、中世都市遺跡としても重要な存在と言えます。
三津
・ 安濃津−三重県津市−東日本の太平洋側の物資が集積され、ここから京都に陸路で運ばれた。
・ 博多津−福岡県福岡市−遣隋使、遣唐使、遣新羅使などの拠点、大陸への国際港。
・ 堺津−大阪府堺市−西日本の太平洋、瀬戸内の物資が集積され、ここから京都に運ばれた。
七湊
・ 三国湊−福井県坂井市−九頭竜川水系の水運拠点として繁栄。
・ 本吉湊−石川県白山市−手取川水系の水運拠点として繁栄。「加賀の本吉銀の出所」と詠われた。
・ 輪島湊−石川県輪島市−日本海交流の重要な拠点として繁栄。
・ 岩瀬湊−富山県富山市−神通川水系の水運拠点として繁栄。
・ 今町湊（直江津）−新潟県上越市−関川水系の水運拠点として繁栄。
・ 土崎湊（秋田湊）−秋田県秋田市−雄物川水系の水運拠点として繁栄。
・ 十三湊−青森県五所川原市−上記による。
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